エリアの老舗や歴史的なものを訪ねたり、新しい建造物や取り組みなどをご紹介。キーワードは「もっと中原が好きになる!」。

市制90周年に制定された「区の木」。中原区と桃の関係を知っていますか?

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かつてブランド桃の産地として知られた中原の桃。この先も親しまれていくことを願って

(お話:川崎市中原区役所まちづくり推進部企画課 澤村 陽平さん)

川崎市制90周年にあたる平成26年に、『中原区の木』を区民による公募で制定することになりました。そのとき候補となる木を数種類挙げ、最終的に区民の皆さまから選ばれたのが桃の木でした。桃は実は中原区に非常にゆかりがある木です。かつて明治から昭和初期ごろまで、中原では桃の栽培が盛んだった時代があります。当地での桃は非常に評判がよく、市場でも大変高値がついたそうです。「西は岡山、東は川崎」 と言われるほどのブランド力がありました。しかしながら、現在ではそうした来歴をご存知の方も年々少なくなってきていますので、区民の皆さまより桃が選ばれたことは、ある種のうれしい驚きでもありました。

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(「区の木に制定されたのを機に、桃の木に親しみを

もっていただける企画を進めています」 と澤村さん)

桃が『中原区の木』 に選ばれましたので、私たち区の企画課でも、「この機に区民の皆さまにもっと桃の木が身近になるように、もっと中原と桃の関係を知っていただきたい」との思いから、さまざまな活動を行っております。そこで、「むかし、中原は桃の里だった」と呼ばれた時代のことをお話いたします。

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(区の木を募集した当時のチラシ。2,220件(うち桃は1,437件)の応募がありました)

愛らしい桃の花が咲き乱れた「桃源郷」も今は昔。再生保存への取り組みが市民の手により進む

今では長く中原区にお住まいの方でも、実際に桃の栽培がされていたことを知る方も少なくなっています。しかし、かつては多くの農家が桃をつくっていました。資料によると、桃づくりは非常に手間ひまがかかり、労力の要る仕事だったようです。ちなみにその当時栽培されていた品種は、現在皆さまがよくご存知の白桃などではありませんでした。これもまた資料によりますと、中原の桃は現在流通しているものと比べるべくもないほど、非常に美味だったという声が聞かれます。当時は至るところの家々で桃をつくっていたので、木からもぎたてで食べることができたでしょうから、新鮮で香りも格別だったのかもしれませんね。momo04

 

また、季節になるとそうしたあちらこちらで桃の花が咲き乱れ、当時の南武線車両から目に飛び込む、満開の桃の並木は壮観だったようです。その頃を知る方々が、その光景をして 「桃源郷のよう」 だったとおっしゃっています。そんな桃栽培も、耕地整理などに伴い、土地を手放す農家さんも増え、最終的には戦争も大きく影響してほとんどなくなってしまいました。現在では、二ヶ領用水中原桃の会さんという団体が、「桃の里」として継承するために、桃並木の再生保存の取り組みに向けて植樹、消毒作業などを行っています。また、毎年3月の『桃祭り』の頃には、二ヶ領用水の脇に植樹された桃が見ごろになり、多くの方の憩いとなっています。

(二ヶ領用水の桃並木。青空に映える鮮やかな色彩です)

和菓子の名店・7店舗が「桃」をテーマに創作和菓子で競演!各店の個性をぜひ味わって

そうした中原と桃の深い縁や、区の木に制定されたことから、区では『桃の彩』という和菓子のシリーズ企画をリリースしています。これは、神奈川県菓子工業組合中原支部加盟の7店舗の和菓子店が、それぞれの創意を凝らして桃にちなんだ菓子をつくったものです。共通する決まりは、「材料に桃を用いること」。各店ごとに桃の風味のマドレーヌ仕立てや、餡に桃を練り込んだもの、青桃のシロップ漬けをそのまま用いたものなど、個性豊かな仕上がりとなりました。7店舗のお菓子をそれぞれ食べ歩くお客様もいるとかで、店舗さんからも一般のお客様からも大変好評をいただく企画となりました。

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(「桃の彩」の一部ラインナップ。季節を問わず通年で販売されています。)

お菓子という身近なものから、桃の木に親しんでいただけることができたのではないでしょうか。販売する際などに、「どうして桃なのか」というお話が話題にものぼれば、かつての昔から続く区と桃の関係が新たに住まわれる方にも伝えていくことができるように思います。

 

現在、中原区では、30~40代の若い世代を中心に人口が増加しています。そうしたこともあり、以前からこの地に住まわれる方と、新たに越してきた方とのスムーズな交流のかたちとして、地元のお祭りなどを大切にしています。10月16日には毎年恒例の「なかはら区民祭」が等々力緑地で開催される予定です。これから秋も深まってきて、街歩きに最適な季節です。さまざまなイベントやお祭りが予定されていますので、ぜひ足を運んでいただきたいと思います。

(画像ご提供:中原桃の会)

 

■取材協力:川崎市中原区役所まちづくり推進部企画課

〒211-8570 川崎市中原区小杉町3-245

TEL 044-744-3152、FAX 044-744-3340

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