エリアの老舗や歴史的なものを訪ねたり、新しい建造物や取り組みなどをご紹介。キーワードは「もっと中原が好きになる!」。

地域の歴史と文化に出逢う、今年初めての小さな旅 「川崎七福神めぐり」

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福の神を訪ねてまちの新たな一面を知る。「七福神めぐり」の奥深さ

恵比須・大黒天・毘沙門天・弁財天・布袋尊・寿老神・福禄寿が七福神と呼ばれる神様です。意外なことにこのチーム編成は神道や仏教、ヒンドゥー教に道教から習合されており、それぞれの神は福の神として信仰されてきました。古代から続いた信仰が発展し、室町時代に現在の七福神のかたちに落ち着いたとのこと。これらの神様が祀られている寺社をお正月にまわって参拝することを 「七福神めぐり」 とし、江戸時代中頃に谷中で始まったとされています。

夏が終わる頃からお正月の企画として考えていた 「七福神めぐり」 。普段なかなか足を運ぶ機会が少ない歴史ある寺社を訪ねることで、見過ごしがちなまちの素顔に出逢えるかもしれない…。そんな思いから、市内中原区に安置されている 『川崎七福神会』 をめぐることになりました。

【大楽院 / 恵比須神】

川崎市中原区上丸子八幡町1522
交通機関:東横線新丸子駅東口下車 徒歩6分

東横線の新丸子駅を下り、商店街を抜けたところに位置する大楽院は、奈良の長谷寺を本山とする寺院。本堂の脇壇に木造の釈迦如来坐像が祀られていますが、これは市重要歴史記念物として定められていて一見の価値があります。

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恵比須神は律儀、福徳、収穫・良果の三つの徳をたたえており、大楽院ではこの三つの徳をたたえて恵比須堂を新築して安置しています。七福神では恵比須神だけが唯一日本の神様で、漁業の神で特に商売繁盛の神様として厚く信仰されてきました。

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【西明寺 / 大黒天】

川崎市中原区小杉御殿町1-906
交通機関:南武線・東急東横線「武蔵小杉」下車 徒歩15分
市バスの場合は1番乗場、西明寺前下車徒歩三分。

中原街道の小杉御殿跡近くにあり、昨年夏の 「中原街道歩き」 でも訪れたことのある西明寺。創建年代は不詳ですが北条 時頼が開基となって創建したともされ、江戸時代には隣地の小杉御殿建立の影響もあり、徳川家の崇敬を受けるなど武家との関係が深い寺院。

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もともとインド由来の大黒天は、頭巾をかぶり大きな袋をかついで手には小槌を携えています。その姿には勤労を徳とし、 「一生懸命働く」 ことで袋には七宝が、足元には米(食物)がおのずと集まり、打出の小槌で黄金を振り出すなど、働くことが福となることを教えています。

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【東樹院 / 毘沙門天】

川崎市中原区宮内1-11-1
交通機関:南武線・東急東横線 「武蔵小杉」 下車
杉40 市民ミュージアム経由市バス蔵前下車徒歩 1 分

JR / 東横線武蔵小杉駅下車、市民ミュージアム経由中原行きバスで蔵前で下りると 1 分ほどで到着する、赤い屋根瓦が目印の寺院です。改築が施されているようで新しくピカピカな境内ですが、その歴史は古く 1458 年にこの地きっての豪族石井氏が毘沙門の社を見つけ再建しています。

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よく説法を聞くことから別名を 「多聞天」 とも呼ぶ毘沙門天は、四天王の一つで北方の守護神。古くから戦勝の神として崇敬されるその姿は、黄金に輝く体に憤怒の相をたたえ、七宝の甲冑を身に着けています。知恵により煩悩を断ち切り、多聞の力で我が身を設ることを教えてくれています。

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【宝蔵寺 / 弁財天】

川崎市中原区上小田中1-4-13
交通機関:南武線武蔵新城駅下車、徒歩 8 分 大谷戸小学校東隣り

JR 武蔵新城北口から 7 ~ 8 分ほど住宅地を歩き、大谷戸小学校のほど近く、通りに面した寺院です。本堂をはじめ弁財天堂や閻魔堂もあり、本尊として安置されているのは子育地蔵菩薩。 1500 年代に創建、その後再建を経て原勘解由左衛門勝光が開基とされています。

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七福神のうち紅一点で知られ、琵琶を携えた女神である弁財天は水の神として知られています。そのため多くの弁財天像は水に由来する場所で祀られているのです。その起源は古代インドの水の神であり、豊穣の神として諸芸能上達や除災など、蓄財の神として信仰されています。

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【安養寺 / 福禄寿】

川崎市中原区上新城 1-9-5
交通機関:南武線武蔵新城駅北口下車、徒歩 3 分

武蔵新城の宝蔵寺から駅へ戻る途中でお詣りできる安養寺、他の寺院と趣きが異なる建造物という印象は、火災や大正時代の大震災などを経て 1966 年 (昭和 41 年) に本堂と客殿を新築した影響もありそう。開山は 1500 年代ですが多くの古文書が散逸されたため、創建の詳細は不明です。

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幸福の神である福禄寿は、中国は道教を起源に持ちます。 「幸福」 「封禄」 「長寿」 の三徳を具現化した南極老人星の化身とされています。長い頭に長くたくわえた顎ひげや大きな耳たぶなど、鶴と亀をたずさえた中国の仙人は、七福神として信仰されながら水墨画の画題としても日本で親しまれてきました。

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【無量寺 / 寿老神】

川崎市中原区中丸子 498
交通機関:南武線平間駅下車 徒歩 10 分
市バス中丸子下車 徒歩 2 分

JR 平間駅から徒歩 10 分ほどで到着する、阿弥陀如来を本尊として安置する寺院。陽光あふれる境内は清浄に保たれ、安らかに心と向き合える風情があります。残念ながら本堂は戦災に遭い 1954 年 (昭和 29 年) 再建されました。帰りには駅前商店街を散策するのもオススメ。

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寿老神も福禄寿同様、道教で祀る星宿の化身であり 「長寿の象徴」 として知られています。調べてみてもその出自は福禄寿に極めて近しく、ご利益も延命長寿、福禄とあり、見分けるには鹿を伴った姿に人間の寿命が記されているという巻き物などが特徴的と言えそうです。

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【大楽寺 / 布袋尊】

川崎市中原区木月 4-22-32
交通機関:東横線元住吉駅下車 徒歩 15 分
臨港バス石神橋下車 徒歩 1 分

元住吉駅下車、商店街を抜けて 15 分ほど歩きますが、臨港バスで石神橋で下りると数分で到着。大楽寺にはお地蔵様が多く、お正月以外でも多くの参拝者が訪れています。 1994 年 (平成 6 年) に竣工された三重塔は見ごたえがあり、敷地内には大楽幼稚園もあります。

弥勒菩薩の化身とされた布袋和尚という実在した禅僧がモデルとなっている布袋尊。おおらかな人柄、吉凶の判断に優れた布袋和尚ですが、大楽寺では家内安全、学業成就にご利益があらたかであるとされています。大きな度量を現す太鼓腹に満面の笑みが実に福々しい印象。

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途中、タクシーも利用して移動した編集部ですが、運転手さんたちは所在地よりも寺社名を伝えるとすぐに目の前まで連れていってくださいました。古くからお詣りする方々が多かったことがしのばれます。

見事な細工の建造物や、周辺にそれぞれ個性ある道すじを通るなど、機会があればぜひお近くの七福神に逢いに訪れてみては。きっと身近なまちの新たな発見があるかもしれません。

 

■出典、参考
川崎七福神会
各寺社掲示板等

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