中原エリアに住む・働く・生きる魅力的な人たちをインタビュー。がんばる誰かの日常が、誰かの背中をそっと押すような、そんなきらめく人たちをご紹介します。

多彩な側面を持つ土地と共に地域の 「和」 を守る 【不動産管理業:内藤 松雄】

武蔵中原の駅からもほど近く、多くのマンションが立ち並ぶ下小田中。代々この地を受け継ぎ、農業に従事する一方で、数軒の不動産管理業も営む内藤 松雄さんにお話を伺ってきました。ご夫妻で町会長や保護司などの役も担い、町内の新旧住民の紐帯として過ごす毎日は、実にご多忙です。

 
内藤 松雄

昭和 32 年生まれ、法政大二高等学校、法政大学経済学部卒業後、川崎信用金庫入社。 24 年の勤務後、父の跡を継ぎ家業の農業、および不動産管理業を営む。現在は下小田中二丁目町会長や保護司として地域貢献も行っている。
 
 

 

土を耕し作物が実る循環の歳月に、時の変遷と共に見出した使命

古くから続く農家なので、今も農業を受け継ぎながら、幾つかの物件の不動産管理業をしています。もともと私は川崎信用金庫に勤務していましたが、 「下小田中農業」 に身をささげてきた父が病気になり、介護を機に退職し、不動産管理業に専念することになりました。以前は、パンジーや菊などの仏花といった花卉栽培中心の農業でしたが、就農を機に、野菜栽培に携わるようになりました。

私が子どもの時分、昭和 38 年頃です。父が農業のかたわら、所有する土地に賃貸物件を建設し、不動産管理業、いわゆる “大家業” も兼務することとなりました。父が引退した後、私があとを継ぎ農業と大家業をやっているというわけです。

先祖代々の土地に暮らし、住み続けているということは、地域についての歴史を知っているということと、それを 「守っていくこと」 への自負のようなものが生まれるものです。時代と共に移り変わっていく変遷を目の当たりにしてきたからこそ、変化することへの適応と共に、守り受け継いでゆくものの橋渡しのようなことも大切にしたい。愛着のあるこの地域での暮らしに貢献できればという思いから、町会長をお引き受けしています。私は保護司、妻は民生委員の仕事もしており、さまざまなかたちで地域の方々と関わっています。

地域の活動で多忙な日々を過ごす内藤さん
地域の活動で多忙な日々を過ごす内藤さん

都市近郊農家が担う、現代ならではの課題に即した役割が 「防災農地」 の整備

そうした経緯で、農地や不動産としての土地をこれまで見守ってきたわけですが、 2011 年の東日本大震災を契機とし、今改めて農地自体への注目がされるようになりました。たとえば、武蔵小杉のあたりは再開発が進み、高層マンションが立ち並ぶ屈指の住宅地として生まれ変わりました。その一方で、下小田中には今でも 25 軒ほどの農家がありますが、農地を含めた地域の伝統風景を後世に残そうという動きが興っています。土壌は荒れたら元に戻らないもの。だからこそ、 「農地を大事にしてくれ」 という声が増えている側面もあるのです。

私が所有している下小田中の農地は、現在 “市民防災農地” に指定されています。この市民防災農地というのは、大震災などが起こった際に一時避難場所として利用することが可能な農地のこと。一時避難のためのテント村となったり、仮設住宅などを建設することも想定されています。東日本大震災の際には、中原街道を通って東京から川崎・横浜まで帰宅する人も多くいましたよね。そうした帰宅困難者となった方々を助けなくてはいけない。つまり、一時的な受け皿としての使用も想定されているのです。

中原区には現在 25 万人ほどの人が居住しており、町会長を務める下小田中二丁目だけで 6000 人、予想される帰宅困難者を含めれば 1 万人の方が在住しております。それだけの人が暮らすこの地域で、街の人々の安全な暮らしのために考え行動したり、人と人との絆をつなぐ機会を見出すことが、古くからこの土地に暮らす人間に与えられた務めなのかなと考えています。ずっと以前から住んでいる方と、新しく住人となった方々をつなぎ、地域の「和」を育んでいけたらと思うのです。

「海外旅行で得る感動は、公私ともに役立っています」

住まう人の目線、「入居者目線第一主義」で作る、美しく楽しい部屋がモットー

市内でも中原区は人口がどんどん増えている、にぎやかな地域です。後ろにある西中原中学校などは、 「日本で一番大きい」 とも言われ、 1500人 ほどの生徒がいるほど。そうした若い世代や、子育て世代が多いこの地域で大家としていくつかの物件を管理していますが、自分の所有する賃貸物件にはとてもこだわりを込めています。簡単に言うと、私はおしゃれなことが大好きなんです (笑) !そういうわけで、住む方が喜ぶようなおしゃれで気の利いた部屋づくりを心掛けています。

たとえば、私は海外旅行が趣味なので、ヨーロッパやアメリカなどに視察に行っては、海外の物件の面白いところや素敵なところを取り入れたリノベーション構想を持つようにしていたり。今年はスペインのコスタ・デル・ソルに行ってきましたが、昔からの設計思想がまだ生きていて、歴史を感じさせる素敵な物件が多く存在していました。ホテルの部屋の作りや、ロビーのシャンデリアなど、海外ではすべてが勉強になります。

やはり入居者目線は常に大切にしています。 「こんな部屋だったら住みたいと思うかな?」 と、あれこれ想像をめぐらせながら、細部へもこだわって作るようにしています。前回のリノベーションでは、リノベーションシステム “リノッタ” を導入しました。大胆な色使いは新鮮ですし、入居者の方にもとても人気があるようです。やはり、大家として工夫を凝らし、暮らす楽しさを味わってもらえる部屋を作っていくことが、入居者に選んでもらえて、最終的には競争にも勝てる物件を作れるのだと思います。

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