中原エリアに住む・働く・生きる魅力的な人たちをインタビュー。がんばる誰かの日常が、誰かの背中をそっと押すような、そんなきらめく人たちをご紹介します。

新時代の事業承継のかたち。ドラマのような出逢いが次の世代にバトンを渡す

カフェハットアイキャッチ

「十年ひと昔」と言うくらい、十年も経てば人もまちも変化をしていて不思議はありません。こと商店街という地域に根差した商いでは、時代の流れや顧客の変化を正面から感じやすいものです。武蔵新城のサンモール商店街にある、創業20年目を迎えた『カフェハット』では、運命の糸に手繰り寄せられるようにして店を背負う、若き2代目オーナーがいました。

 

出塚 祐司カフェハットプロフ 1982年4月生まれ。子母口で生まれ育ち、高校時代に『カフェハット』の客の一人として前オーナーである服部 宣夫さんと出会う。大学卒業後、店長として入店し6年間のオーナー見習い期間を過ごす。その後、正式に二代目オーナーを承継。血縁のない関係性での事業承継事例として注目を集めている。

 

常連客の一人として出逢った高校生の頃。何気ない性格まで見ていてくれたオーナー

前オーナーの服部とは、血縁関係のないいわば他人という間柄でお店を引き継ぎました。商店街では後継者がいないという理由でお店をたたむことも少なくないので、うちのような例はとても珍しいということでお話をする機会も増えています。オーナーの元で何年も修行する姿を見せて認めてもらった、などといったことでもなく、僕にとってはとても自然な成り行きでした。最初の出会いは僕ではなくて姉。『カフェハット』に常連客として通う姉にくっついていったことがきっかけで、「居心地がいいなぁ」と思うようになり、すっかり僕自身も常連の一人に。服部にはよく声をかけてもらうようになって、そのうち一緒に銭湯に行くまでの仲になりました。今でも「おれたちは裸のつき合い」と、茶化して言い合っています。もともと自分より上の世代の方々と接することが好きで、かわいがっていただいていることもうれしく思っていましたので、「年の離れた店の主人と常連客で普通は銭湯に行かないよ!」と驚かれることもありますが、僕にとってはとても自然なことでした。

人懐っこい笑顔は出塚さんのパーソナリティーをそのまま表現しています
人懐っこい笑顔は出塚さんのパーソナリティーをそのまま表現しています

そのうち、商店街の夏祭りに出店するお手伝いを仲間と一緒にするようになりました。このことは、服部が今でもよく言ってくれるエピソードなのですが、お祭りが終わってお店のなかでみんなが軽く打ち上げをしてワイワイと過ごしていたとき。空いたグラスがどんどん貯まっていくものですから、厨房で食器を洗っていました。そういうところを見ていてくれたようです。

 

 

突然の「店を継がないか?」という申し出に退路を断って受けた日から『カフェハット』第二章が始まった!

 

飲食店でアルバイトをしていた学生時代、漠然と「いつか自分の店が持てたらいいな」と思ったりはしました。やがて就職活動のタイミング、なんと服部から「この店を継がないか」という話があったのです。

時間の流れを感じさせない居心地の良い空間をつくっています
時間の流れを感じさせない居心地の良い空間をつくっています

しかも当時の帳簿を見せながら、経営状態をすべて開示したうえでのこと。正直な気持ちとしては不安しかありませんでした。状況として先行きは不安定、社会経験もないのに経営なんて…。不安と迷いのなかで迎えた、飲食系企業の最終面接。「よし、もしもこれがダメだったら、お店を継いでみよう」と決めて臨みました。結果、不採用。後から聞いた話では、その企業は最終面接まで進んで落ちることは滅多にないということで、なんだかこれも『カフェハット』を引き継ぐべく進んだ話だったように感じてしまいますね (笑) 。

「次期オーナーを前提にした店長」というかたちで入店。とはいっても、最初から「好きなようにやれ」と言われ始まった見習い期間で、実質的には経営をすべて担っていました。最初に着手したのは、フードメニューを刷新すること。フードはまだ伸びしろがある、という確信があったのです。当時、パスタハウスで調理をやっていた相棒を一緒に連れてきたので、思い切ってパスタを中心としたメニュー構成に、コーヒーも一杯ずつ丁寧に淹れたサイフォン式へ、などこだわりを持って行いました。ともなって内装もリニューアルをし、落ち着きもありながらカジュアルに過ごせる店づくりへ。やがて無我夢中の6年が経った頃、服部から「ここから先は若い力でやってみてよ」。そうして完全に経営を引き継ぐことになったのです。

 

一店舗だけの努力では限界がある。商店街全体、ひいてはまち全体と連携してムーブメントにしていきたい。

 

服部とは親子ではないのに、似ているなと感じる点が多くあります。たとえば人への思いとか。フードや内装をリニューアルしたことが抜本的な黒字転換に寄与したとは思えません。人への思い、それが一番服部と似ているところであり、それを一番に大切にやってきました。

ご来店くださった方には様子を見ながらお声をかけて、まったく事務的にしか接しない間柄というのは僕がなんだかすごくいやなんです。かといってお客様はそれぞれ思い思いのお時間を過ごされていますから、お邪魔にならないように配慮をしながらお声をかけるようにしています。僕だけではなく、従業員にもそうしたことを何より大切に考えてもらうようにしています。それが最終的にお店の状態が上向いていったことにつながっているのかもしれません。

前オーナーの服部 宣夫さんと。並ぶと本当の親子のように似た雰囲気
前オーナーの服部 宣夫さんと。並ぶと本当の親子のように似た雰囲気

なんの苦労もなくお店を持てて最初から黒字だったわけではなく、数年前までは本当にぎりぎりの生活でした。やっと今なんとか軌道に乗ってきましたが、個人のお店一つで売上を上げるのには限界がある。そんな思いでいるとき、サンモール商店街の理事長のご不幸があり、自分が手を挙げることとなったのです。商店街の理事長であれば、もっといろいろな方とつながる機会ができるからです。商店街の理事長を僕のような世代が務めさせてもらえることは稀だと思うのですが、服部の存在も手伝って、ご年配の世代の方々と交流する機会が多いため、うまく商店街でも潤滑油のように機能できたらと思っているのです。

 

カフェハット
神奈川県川崎市中原区新城1-16-12 栗山ビル2階
TEL : 044-788-0116
営業時間
朝 : 9:00 ~ 11:00
昼 : 11:00 ~ 15:00、ティータイム 15:00 ~ 18:00
夜 : 18:00 ~ 21:00
定休日 : 日曜日

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