中原エリアに住む・働く・生きる魅力的な人たちをインタビュー。がんばる誰かの日常が、誰かの背中をそっと押すような、そんなきらめく人たちをご紹介します。

創業者である父の理念を受け継ぎ、大好きなお菓子を新城の地に届ける “街の和菓子屋さん” 【遠藤 広美 (大平屋) 】

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武蔵新城駅南口の商店街、あいもーるアルコ。このあいもーる商店街に古くから店を構えているのが、 「御菓子処 大平屋 (たいへいや) 」 です。かわさき名産品にも選ばれている 「最中 川崎新城ばやし」 や 「橘姫だるま」 、 「最中 影向の石」 など、川崎の伝説などを活かした銘菓などのほかにも、お団子や大福、あんずロールなど、気軽に買える日常の和菓子も揃っています。

昭和 30 年創業というこの大平屋の店頭で、日々お菓子を販売し、街の人々を見つめている二代目・遠藤広美さんにお話をうかがいました。

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「大平屋」 の長女として生まれ、幼い頃からお菓子作りに情熱を傾ける父の背中を見て育つ。 15 年前、 2 代目として大平屋を父から受け継ぐことに。現在は和菓子職人のご主人・信次さんと共に大平屋を切り盛りしている。

街の歴史を見つめてきた店。親子二代にわたり和菓子を慈しみ、創意工夫を続けていく

大平屋は武蔵新城の地で 60 年以上、街の和菓子屋としてやって来ています。武蔵新城も今でこそこんなに発展したけれど、私が子どもだった頃は砂利道でね。駅の位置も今よりももっと南寄りにあって、店に近かったんです。電車が来たのに気付いて、走りながら「ちょっと待ってー!」と叫ぶと、車掌さんが電車を止めて待っていてくれるような、牧歌的な時代でしたよ。

私は子どもの頃から、父親が愛情を込めてお菓子を作り、街の人に売っているのを見て育ちました。父は本当にお菓子が好きでね、 「お菓子のデパートを作りたい」 と、洋菓子の職人さんを雇って、和菓子屋の隣で洋菓子店も経営していました。探究心も豊富でね、いろいろな原材料を取り寄せて研究していました。また、川崎の橘神社に伝わる弟橘媛 (おとたちばなひめ) の伝説にもとづいて、姫だるまをかたどったお菓子 「橘姫だるま」 や、新城神社のお神楽の面をかたどった最中 「川崎新城ばやし」 など、いろんなお菓子を開発していましたね。

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全国菓子博覧会で高松宮賞も受賞している「橘姫だるま」
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すべてのお菓子は一つから購入可能

父がそんな風に、真剣にお菓子作りに打ち込むのを見ていたせいか、私もお菓子が大好きなんです。お菓子屋の仕事も大好きで、子どもの頃から、当然自分が父の跡を継ぐのだと思って育ちました。大人になって、新潟出身の和菓子職人の夫と結婚し、店の仕事を手伝っていました。15年前に夫が代表取締役社長となり、私が専務としてこのお店を経営しています。息子と娘がいるのですが、二人とも和菓子職人になりました。娘は、今は出産したばかりで仕事をお休みしていますが。息子も、今はよそのお店にいますが、いずれ帰ってくるかもしれませんね。

二つの父の教えは、何よりも大切な守るべきもの。お菓子が大好きだからこそ、そのこだわりは譲れない

お菓子を作っていく上で、うちが一番こだわっているのは、いい材料を使うということです。添加物や合成着色料は、うちの店では一切使っていません。購入した原材料に入っているものはどうしようもないのですが…。自分がお菓子が大好きなので、そこで妥協はしたくないんです。それに、変なものを使うと、すぐにお客さんにバレて、叱られてしまいます。お客様とも古い付き合いで、親子三代で買いに来てくださる方もいます。うちの味をわかっているので、少しでも何かを変えると、お客様から指摘されてしまうんですよ。

あともう一つこだわっているのは、値段を高くしないということ。ちゃんとした材料を使った本物の味を、できるだけ安価に街の人にお届けしたいんです。贈答品のようなお菓子だけでなく、すあまやどら焼き、きんつばというような気軽に買えるお菓子も作り続けています。 1 つからでいいので、気軽に買いに来て欲しいですね。

「いい材料を使う」、「値段を高くしない」、この二つの父親の教えを守って、真面目にお菓子を作り続けています。だから、我が子のようなかわいいお菓子たちを、胸を張ってお客様に提供できるんです。うちのお菓子は、本当に美味しいと思いますよ(笑)。

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カフェオレ大福、モンブラン大福など、現代的な和菓子も多数

お店の味を知り尽くしたお客様が、店を育ててくれた。通りかかるお客様を見守り、会話することで元気づけたい

うちの店は、街の人に育ててもらったんだと思っています。父が始めた洋菓子店は 2014 年にやめてしまったのですが、「あのあんずロールがまた食べたい!」というリクエストが多いので、また洋菓子の職人さんから作り方を教えてもらい、あんずロールの販売を始めました。あんずジャムの入ったロールケーキなんですけど、私もこれが大好きでね。古くから通ってくださるお客様が「やっぱりこの味よね」と買ってくれると、うれしくなりますね。

最近は、若いお母さんがうちで悩みを相談してくれることもあります。話しかけてくれれば、アレルギーのことや食材のことなども相談に乗りますよ。やっぱり、そうやって気軽に話せるのが “街のお菓子屋さん” のいいところですからね。

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taiheiya‹2-360x360御菓子処 大平屋 (たいへいや)
神奈川県川崎市中原区新城1-2-20
TEL : 044-766-5494
営業時間
月・水・金・土・日曜日 : 9:15 ~ 19:00
火・木曜日 : 9:15 ~ 18:00
定休日 :元日を含み年4日
URL: http://www.taiheiya.net/

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