毎年この時期になると、普段は当たり前に感じている “平和” について思いを馳せる方も少なくないはず。けれど “平和” に当たり前など存在しません。たとえば戦争を知らない世代の私たちは、多くの犠牲の上に築かれた “平和” の時代を生きています。そして今また、世界がきな臭い動きを始め、遠い場所では今日もその “平和” は脅かされています…。
今回編集部は、終戦記念日を前にじっくり “平和” に向き合い(それがたった一年に一度であっても)家族で “平和” について語らい考えを深めるきっかけにしたいと思い、 「川崎市平和館」 さんの取材をしました。しかし、訪問してみて “平和” とはもっと普遍的で奥行きのある概念、状態であるのだと痛感しています。ぜひ今回は 「川崎市平和館」 の取材記事としつつ、読者の皆さまにも “平和” の築き方についてお心を留めていただければと願う次第です。
「戦争がなければ平和と言えるのか?」 安寧をおびやかすもののない状態が “平和” であるということ
「川崎市平和館」 は、その沿革からしてきわめて象徴的です。川崎大空襲のあった4月15日を開館の日とし、その立地は元東京航空計器の工場であり、戦後は米陸軍出版センターとして使われていた跡地に当たる場所。平和公園に隣接したモダンな建造物では期間ごとに開催する 「企画展」 と、常設展示とに分かれています。企画展は現在、9月3日(日)まで 「原爆展・特別展」 を開催、これは毎年この時期に開催していて、今年は広島、来年は沖縄、ちなみに昨年は長崎と、現地の貴重な資料を借りて特別展示しています。今年も広島平和記念資料館所蔵の、被爆直後の市内の様子などを撮影した写真パネルを展示しています。
被爆してどろどろに溶けたガラスや、自身も被爆した少女が遠方に住む家族を安心させるために自分の無事を知らせたハガキも見ることができます。実は少女は数日後絶命しており、今わの際にあってなお家族を想うひたむきな心に胸を衝かれます。
また、川崎市在住の方々などから寄贈された資料も展示されています。
日の丸に寄せられたあふれるほどの文字、ひと針ごとに思いの込められた 「千人針」 を前にすると見知らぬたくさんの人の気持ちが迫りくるようで、知らず涙がこぼれます。
包括的平和への理解を深め、市民の平和交流の場としても。実は幅広い利用が可能な施設!
上階では常設展示で 「日本と戦争」 をはじめ、「川崎と戦争」 や「戦争と人間」、「兵器と戦争」 などのコーナーがあり、パネルや動画などと共に学ぶことができます。
たとえば、戦時中の川崎市における市民生活についてなどを知ることができたり、日本と戦争の関わりについて、明治維新から終戦・日本国憲法の制定までを説明していたりなど、時間をかけて丁寧に視聴していくことをお薦めしたいです。
事前に申し込めば、専門調査員による各展示の詳細な説明を受けることもでき、より深く理解することもできるそう。あるいは音声ガイドの貸し出しもしているので、ぜひきちんとした解説つきで観覧してみてください。
そして最後に、 「平和とは、すべての人間が暴力や差別、貧困や環境破壊におびやかされず安心して生活できること」 という川崎市平和館の考え、また在り方について改めて考えてみませんか?同施設ではこうした、平和を阻む戦争だけではない障壁についても積極的に理解を深めるための発信をしています。たとえば7月に開催された 「へいわのためのリテラシー」 というイベントでは、高度に複雑化する情報化社会にあって、どのように情報とつきあうことが平和を構築できるのかなどをナビゲーターと共に考えました。
また、250人収容可能な屋内広場をはじめ、各種会議室や研修室も使用することができます。詳しい利用方法等は施設に直接お問い合わせください。なお、入館は無料です。
長い夏休み、ご家庭でもかけがえのない 「平和」 について団らんのなかで話し合ってみませんか?
詳しいアクセスについてはこちらをご参照ください。